定期監査と臨時監査

監理団体は、技能実習生の受入れ企業である実習実施者に対し、技能実習の実施状況について定期的に監査を実施しなければなりません。また、実習計画認定の取消事由に該当する疑いがある場合は、直ちに臨時監査を実施しなければなりません。

目次

定期監査

実習実施者に対する監査は、技能実習生が認定計画と異なる作業に従事していないか、実習実施者が出入国または労働に関する法令に違反していないかなどの事項について、不正な行為を見落とすことのないよう、監理責任者の指揮の下で監査実務を担当する監理団体の役職員とともに、3か月に1回以上の頻度で適切に実施しなければなりません。

「3か月に1回以上の頻度」とは、入国後講習開始日の属する月を起算月とする3か月(四半期)ごとに少なくとも1回監査を実施するということです。
例えば、入国後講習開始日が4月15日である場合は、6月30日までに監査を実施する必要があり、次回は、7月1日から9月30日までの期間に、監査を実施することになります。
なお、適正な実習監理の観点からは、定期的に技能実習の実施状況を確認することが妥当であることから、前回監査実施日を起算日として3か月以内ごとに監査を実施することが望ましいです。

監査の方法と内容

①技能実習の実施状況の実地による確認

割増賃金の不払、労働時間の偽装、技能実習計画とは異なる作業への従事、実習実施者以外の事業所での作業従事、不法就労者の雇用、入国後講習期間中の業務への従事など、問題が生じやすい部分を重点的に確認し、技能実習計画に従って技能実習を行わせていなかったり、出入国・労働関係法令に違反していれば、適切に指導を行わなければなりません。

「技能実習計画と異なる作業に従事していないか」については、実習実施予定表と照合して確認するだけでなく、作業内容が審査基準に定める必須業務等に合致しているかを必ず確認しなければなりません。

②技能実習責任者・技能実習指導員からの報告を受ける

技能実習計画の進捗状況や技能実習生への日常的指導、接し方等について徹底的にヒアリングをしなければなりません。

③技能実習生の4分の1以上と面談

1回の監査につき技能実習生の4分の1以上と面談しなければなりません。年4回の監査でできる限り全ての技能実習生と面談することが望まれます。技能実習生が2人以上4人以下の場合には、2人以上と面談しなければなりません。

面談をしたところ、例えば、仕事がきつい、指示がわからない、いつもつらそうにしている、仕事のことを考えると眠れなくなるなど、技能実習を継続していくのに支障が生じるおそれがあるような内容や状況を把握した場合は、実習実施者と相談し、技能実習生の負担軽減のための業務上の配慮をしたり、技能実習生とのコミュニケーションを図る方法を見直す等の対応を行わなければなりません。

④実習実施者の事業所の設備、帳簿書類等の閲覧

事業所の設備・帳簿書類の確認をするにあたっては、例えば下記のような点に留意しなければなりません。

・技能実習計画に記載された機械、器具等の設備を用いて、安全衛生面に配慮して、技能実習計画に記載されたとおりに技能実習が行われていること
・賃金台帳、タイムカードなどから確認できる技能実習生に対して⽀払われた報酬や労働時間が技能実習計画に記載された内容と合致していること
・技能実習生に対する業務内容・指導内容を記録した⽇誌から、技能実習生が技能実習計画に記載された業務を行っていること

⑤技能実習生の宿泊施設等の生活環境の確認

宿泊施設等の生活環境の確認にあたっては、例えば下記のような点に留意しなければなりません。

・宿泊施設の衛生状況が良好であるか
・宿泊施設の1部屋当たりの実習生数が何名となっているか
・不当に私生活の自由が制限されていないか


監査は、監理団体が行う監理事業の根幹業務なので、当然のことながら外部に委託することはできません。

しかし、技能実習生との面談時に通訳人を外部委託することは、補助者としての業務に過ぎないので可能です。ただし、通訳人を外部委託したとしても、監理団体の役職員が責任を持って面談に対応しなければならないことに変わりはありません。また、中立的な観点から、実習実施者や送出機関の職員やその関係者を通訳人とするのは望ましくありません。

監査を実施したときは、監査を実施した日から2か月以内に、実習実施者の住所地を管轄する機構の地方事務所指導課に監査報告書を提出しなければなりません。

監査報告書

臨時監査

3か月に1回以上の頻度で行う監査のほか、実習実施者が認定計画に従って技能実習を行わせていない、実習実施者が不法就労者を雇用しているなど出入国関係法令に違反している、実習実施者が技能実習生の労働災害を発生させたなど労働関係法令に違反しているなど、実習計画認定の取消事由に該当する疑いがある場合は、直ちに臨時の監査を実施しなければなりません。

特に、技能実習生に対する暴行、脅迫その他人権を侵害する行為が疑われる情報を得た場合は、迅速かつ確実に臨時監査を実施しなければなりません。

また、臨時監査後、電話等により、その概要を直ちに実習実施者の住所地を管轄する機構の地方事務所指導課に連絡し、監査の実施結果については、速やかにとりまとめて監査報告書を提出しなければなりません。

具体的には、技能実習生の保護や早期の事案の解明が求められることから、臨時監査実施後、遅くとも2週間以内に監査報告しなければなりません。

【臨時監査の位置付けについて】
実習実施者が、実習認定の取消し事由のいずれかに該当する疑いがあると監理団体が認めた場合に直ちに行う監査を、便宜上臨時監査と呼んでいます。この臨時に行う監査についても、上記の疑いがある事項を確認するほか、定期監査と同じ項目においても確認することにより、定期監査の一つとすることができます。したがって、定期監査または臨時監査が3か月以内に行われていればよく、必ずしも定期監査を3か月に1回以上の頻度で臨時監査とは別に実施しなければいけないわけではありません。

書類の管理

監査報告書の写しは、監理事業所にきちんと保存しなければなりません。
また、監査報告書のほかに、監査実施概要(参考様式第4-7号)を用いて監査を実施した場合には、監査報告書と一緒にまとめて保存することが望ましいです。その他、技能実習責任者・技能実習指導員からの報告内容、技能実習生との面談結果等を記録した文書、監査の際に撮影した設備等の写真等もあればまとめて保存することが望ましいです。


監理団体が、実習実施者に対して実施する訪問指導については、こちらの記事をご覧ください。

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この記事を書いた人

三木 秋穂のアバター 三木 秋穂 特定行政書士・申請取次行政書士

淡路島の走る行政書士/Luật Sư Hành Chính/行政書士事務所8年経営/日本で頑張る特定技能外国人サポート+技能実習/車と農地と建設業の手続きもやります/愛媛県イメージアップキャラクター「みきゃん」応援団/山登りと長渕剛の歌と神社巡りが好きです/ベトナム料理を食べ歩いています
▷1972年(昭和47年)9月21日生まれ
▷兵庫県行政書士会所属
▷兵庫県行政書士会申請取次行政書士管理委員会副委員長
▷兵庫県行政書士会淡路支部理事

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